治療効果は深い睡眠にあらわれる
当院の特徴は、施術後に深くよく眠られるようになることです。睡眠は、翌日に元気に活動できるために、からだの疲労を取り除いてくれます。とくに、脳の中ではそれが著しく高まっています。睡眠時に脳の中で水分が大きな波となって、神経の活動で生じた代謝産物を洗い流していることが明らかにされました。
身体(からだ)の水分は60%といわれますが、脳は80%ともいわれ、脳の内部と外部は脳脊髄液で満たされ、脳室の中から湧き出る脳脊髄液が、睡眠時に脳の中に浸透し間質液となり神経細胞の間を揺らぎながら流れてゆきます。βアミロイドなどの毒素ともなり得る老廃物を静脈と静脈周囲腔へと押し流し、リンパへと流出して行くことが最近明らかにされました。こうした、脳の中の水(間質液)の流れは、深い眠りの徐波睡眠時に大きな波になっているという報告があります(Science 2019)。
クラニオパシ(頭蓋療法)という代替医療の分野では、1940年代にすでに脳脊髄液の揺らぎを感得し、オステオパシ治療へと発展させてきた歴史があります。筆者は、1980年前の留学中にこのクラニオパシ(頭蓋療法)との出会いがあり、それ以来今日まで研究し続けてきました。クラニオパシ(頭蓋療法)では、頭蓋と脊柱の中の揺らぎが中心なのですが、私は睡眠時の呼吸運動が全身の体液を揺らしていると感じ取り身体の隅々に伝わる揺らぎに「からだが呼吸する」身体呼吸と名付けています。
大きな圧変動には横隔膜の呼吸運動が必要です。そのためには、まどろむことが効果的で、いかに眠りに誘うことができるかということになります。身体で感じ取る体験的な積み重ねと学術的な研究から、自律神経の揺らぎのなかに呼吸性の揺らぎ(HF成分)が眠りを誘うことが感得できるようになりました。
1分間に9回以下の緩やかなリズムですが、これはリンパ管の収縮リズムと同じであり、呼吸がこのリズムと重なることで全身に伝わる身体呼吸になるものと確信できます。
息を詰めて、常に緊張して仕事をしている人は、呼吸性の自律神経のHF成分の揺らぎはなくなり、交感神経の活動に関わるLF成分の揺らぎが支配的になっています。触れていると揺らぎはほとんど感じられません。呼吸も浅く、背中はパンパンで、胸にはまるで鎧(よろい)を纏っているような感じです。息苦しさや、脈が乱れるのは不思議ではありません。もっと大事なことは、深く入眠できないことが問題です。慢性的な疲労を招いてゆきます。健康な日々は深い睡眠があってこそといえます。
施術は、全身にひろがる呼吸の波動を感じ取り、滞りのある部位を見つけて施術しています。
呼吸は、循環系と一緒になって身体の隅々までおよんでいます。身体の緊張はさまざまに分布し、身体を歪めています。身体の緊張と歪みはもとをたどれば、習慣的な身体の使い方や不良姿勢によりますが、さらにたどれば脳の支配下にあるともいます。深いリラックスした呼吸は、そうした緊張を緩解させてくれます。驚くほど自然に歪みが解消されることも珍しくありません。正直なところ身についた緊張パターンの抵抗を崩すには結構気力を使いますが、葛藤するなかで自発的に湧き出るリズムがあり、そうなると無為自然に任せる気持ちになります。
身体のリズム
呼吸と心臓の拍動は、安静時にはおおよそ1:4の比率になっています。心拍が80/分であれば、呼吸数は20回になります。原因が分からず学校に行けない高校生や、仕事に行けない人たちのなかには、呼吸と心拍のリズムに不調和(調節障害)がみられます。呼吸のリズムで心拍数を調整できませんが、これに歩調を介在することで調和をはかることができることをつきとめました。たとえば声を出して数を数えながら息を吐きながら、ゆっくりと一歩一歩ステップをその場に止まって踏んでいると、呼吸と心拍のリズムが合ってきます。心拍を90/分くらいにしたいと思えば、呼吸数が20回程度になるように、声を出すこと(呼気)と歩行のステップを合わせればいいわけです。
脳の活性に関わる鼻呼吸
頭がはっきりしない、頭がはたらかないといった症状は、脳に霧がかかったような状態でブレインフォグといわれます。脳幹から投射するセロトニン系やアドレナリン系が、十分に前頭葉を賦活してくれていないからです。
実は、鼻呼吸が重要になってきます。呼吸には左右の鼻腔から周期的に空気が流入しています。数十分から数時間の周期性がみられます。とくに睡眠時にこれがはっきりとあらわれます。この周期性に、左右の脳の活動が関連していることが明らかになりました。鼻の呼吸が脳のはたらきを左右交代で活性化させています。口呼吸は脳を刺激しません。気分が安定しない、イライラする、落ち着かないなど精神的な影響は良質な睡眠がとれていないことに起因している可能性があります。
脳の活動は鼻呼吸と同期していますが、口呼吸では同期性がみられません。鼻呼吸は脳にリズミカルな刺激をあたえています。
鼻が詰まるといった訴えは、交感神経の緊張からくる鼻粘膜の充血や、アレルギーによる鼻炎もありますが、鼻のサイクリックな周期性はこれらはと違います。どちらかの鼻腔で匂いが通りにくいといった感じでみることができます。
匂いは脳を直接刺激します。大脳辺縁系と視床下部それに脳幹の大脳賦活系を刺激するのです。匂いが情緒的な気分を醸し出し、昔の記憶と結びつく理由がここにあるのです。
鼻呼吸は匂いを運び、視床下部を刺激しホルモンの分泌にも関わっています。臨床的に重要なのは、副腎皮質刺激ホルモンとの関連になるでしょう。副腎皮質は朝の目覚めとともにコルチゾールを分泌が高まり、身体の活動エネルギーを高めてゆきます。コルチゾールが十分に分泌されていないと交感神経の活動が高まらず、身体はだるさで重く感じられます。なかなか朝起きられず、ようやく午後になってから動き出せるようになります。そうしますと、就寝する時間が遅くなり、朝も起きられないということから、きちんとした一日の生活ができなくなることになります。
鼻呼吸を整える技術が身体呼吸療法にあります。
頭蓋骨は驚くほど精密に組み合わさり、内側からの圧力の変動により微妙に動いています。身体呼吸療法では、頭蓋の内圧変動を利用して鼻呼吸の偏りを調整し、脳のなかの水の流動性を促すことができます。施術を受けられた方々がみなさん、良く眠られるようになったと話してくれることから実証されているといえるでしょう。
【患者さんの質問に答えて】
腰痛や肩こりなどいろいろな症状があるのですが、からだの痛みや凝りに効果がありますか?
もちろん、効きます。手で触れればどこが滞っているかわかります。
肉体は弾力性に富んで柔らかいのですが、年齢を重ねるとだんだんと硬くなってきます。これは身体をつくっている線維の弾力性がなくなってくるからです。とくに、コラーゲン線維が少なくなってきているからかも知れませんが、線維の束に含まれている水分が少なくなっているからでもあります。筋肉も、神経の線維も、結合組織で織り込まれた膜で被われた束になっていますが、このなかに水分も含まれています。身体の水分は呼吸の力を借りて流動し循環していますので、水分の流れが滞ったところは老廃物は蓄積し、炎症が起きやすく痛みを発症します。
深い呼吸とくに睡眠時の呼吸のおかげで、脳はもちろんのこと全身を流動する水(間質液)はリンパの流れになって静脈へと戻っていけるのです。そして、静脈は肺で二酸化炭素と酸素を交換し、心臓から動脈へと全身に行きわたり、エネルギーをつくるために細胞に酸素を運びます。呼吸はとても大事です。
大場徒手医学研究所 身体呼吸療法
千代田区鍛冶町2-2-8(旧)タカシマビル9階
Tel. 03-3254-0097
あぐりこ大王
郷土の鳥海山の麓
激しい風雪に耐えて生きる姿に感動